第40回大会 レースレポート

日程 2017.07.27 , 07.28 , 07.29 , 07.30
サーキット 鈴鹿サーキット (三重県)
ライダー 津田 拓也 / ジョシュ・ブルックス / シルバン・ギュントーリ
予選 2位
本戦 7位

いよいよ第40回鈴鹿8時間耐久レースが開催される7月を迎えた。
今年は7月5日・6日に車両メーカーとタイヤメーカーのテストが、続いて翌週の7月11日・12日・13日の3日間にサーキット主催の合同テストが行われ、都合5日間、鈴鹿でテストを行うことができる。

最初のテストにヨシムラスズキMOTULレーシングは、エースライダー津田拓也と、新規加入となる元スーパーバイク世界チャンピオンであるシルバン・ギュントーリの2人で臨むこととなった。
新型GSX-R1000の開発を全日本の戦いの中で行ってきている津田にとって、元世界チャンピオンのマシンへのコメントに的確さはさすがと言えるもので、大きな刺激を受けながら前向きなテストを進めることができた。
それはテスト結果にも明確に表れており、2日間のセッションの中で総合2番手に付けることができた。

翌週の3日間のテストにはジョシュ・ブルックスも合流。初日は2’8.126で3番手、2日目が2’7.954で2番手、3日目は2’8.886で11番手となった。1回目のテストは気温がそれほど上がらず、レースコンデイションへの準備という点で満足のいく状況にならなかったが、2回目のテストはやっと気温も上がり、レースを想定したセットアップを本格的に進める状況が整った。決勝へ向けてペースを上げたいところだったが、新型車両を使うということで、シーズンオフから進めてきたスペックが、今一つ燃費と出力特性のバランス的に難しいことが2回目のテストで露呈。チームはレースウイークまでの約10日間に大きな仕様変更を決断し、チームの工場では連日、開発エンジンがベンチ上で回され続けた。

いよいよレースウイークを迎えた。ヨシムラは第1回鈴鹿8耐で勝利して以来参戦を続け、10年前の30回大会時にも優勝。
こうした歴史から、吉村不二雄社長は「節目、節目に我々ヨシムラは勝利を挙げてきた。是非この40回大会も勝ちたい」と語り、勝利への確かな手応えがあることを感じさせていた。

レースウイーク初日となる木曜日は午後から1時間のセッションが2回行われた。ヨシムラスズキMOTULレーシングは1回目を2’9.263のタイムを出し、6番手で終了。
2回目は2’8.321で3番手となった。翌金曜日は午前中に2時間のフリープラクティスがあり、午後は20分間ずつ3人の計時予選となる。

7月29日(金)公式予選

あいにくのウエットとなってしまった朝のこのセッションは2’12.098で7番手。その後、路面は乾き、ドライでの計時予選を行うことができた。
最初にギュントーリが登場。2’7.508で4番手となった。2番目の計時予選にはブルックスが走行し、2’8.134で6番手。3番目の計時予選は津田が走り、2’6.929で組トップとなった。
今回の8耐は昨年に引き続き、予選、決勝を通じて全部で20本のタイヤの使用制限がされている。
決勝8スティントをすべて新品タイヤで走行しようとすると、予選では4本しか新品タイヤを使うことができない。
比較的涼しいコンディションとなった午前中はタイムが出しやすいため、チームはそこに新品タイヤを集中させ、午後はユーズドで決勝に向けた準備を進めながらのタイムアタックという作戦を採った。
午後にギュントーリは2’8.649で組2番手、ブルックスは2’8.0231で組2番手、津田は2’8.735で3番手。予選結果は各ライダーのベストタイムから出された3人のアベレージタイムで決定されることから、チームは2’7.523とハイレベルなタイムを記録し、翌日のトップ10トライアルには2番手で進出することに成功した。

7月29日(土)トップ10トライアル

トップ10トライアルには最後から2番目に登場。チームはギュントーリと津田にマシンを託した。
最初に登場したギュントーリはそれまでのベストタイムを東コースで0.204秒削り、サーキットを沸かせる。ところがややペースが高すぎたようで、二輪専用シケインで転倒してしまった。
ライダーにケガはなく、マシンもそれほど大きな損傷はなかったが、残念なハプニングとなった。
津田も東コースでマイナス0.201秒というその時点での最速タイムをマークし、観客から大きな拍手をもらいながらチェッカー。2’6.282の2番手となり、この位置から決勝をスタートすることになった。

7月30日(日)決勝レース

決勝日はできれば朝から気持ち良く晴れ上がって欲しかったが、残念ながら厚い雲が空を覆う中でスタートを切ることになった。
ル・マン式スタートで午前11時半にスタートが切られたのだが、ここでスタートライダーの津田はエンジン始動に若干手間取り、10位前後まで順位を落としてしまう。
速さは十分あるだけに、そこからの追い上げに期待されたが、2周目のヘアピンで前を走るマシンに追突してしまって転倒。
マシン修復のためピットに戻らざるを得ない状況となり、最後尾まで順位を落としてしまった。

しかし、ライダーもチームも諦めず激走を続け、1時間経過時に60位だったが、2時間経過時35位、3時間経過時に28位と順位を上げ、スタートから6時間経過時の午後5時38分には10位に浮上。
周囲が2’12秒から14秒あたりで周回するのに対し、3名のライダーは2’8秒から10秒台でラップする。
190周目、津田が最後の役目を終えピットインし、マシンをブルックスに託す。ブルックスはさらに猛然とプッシュし、トップのマシンも2’11秒から12秒台でラップする中で、夜間の走行にもかかわらず抜群のスピードを見せて時折2’9秒台にタイムを入れて前を追い、順位を7位まで上げ、スズキ最上位でチェッカーとなった。

最後まで諦めずに戦い切ったヨシムラスズキMOTULレーシングの健闘に対し、そのチャレンジスピリッツを賞賛する「Anthony Delhalle EWC Spirit Trophy」が授与された。

加藤陽平 監督コメント

新型車両になるということで、昨年の8耐よりもずっと前から今年の8耐に向けて準備を進めてきました。
開発当初から新型マシンのポテンシャルの高さは疑いようのないものと感じていました。
レース車両に仕上げるということで、タイヤのグリップやサイズなどが大きく変わることによってバランスを一旦崩してしまう場面もありましたが、テストを通じてそうした課題もチームの努力によってしっかりと克服し、レースウイークに入ることができました。
また、より勝利に向かって行く為に事前テストからエンジンスペックの変更を決断しました。僅か10日間という短い時間の中で、我々の感覚で言うと2ステップくらいの大きなスペック変更をやり遂げたチームスタッフには心からのお礼を言いたいです。
その様な流れの中、自信を持ってのレースウイーク入りとなり、スターティンググリッドも2番手という良い位置を獲得できましたし、順調には進んでいたのですが、いざレースではスタートで若干出遅れ、そこからの焦りにより転倒という最悪の結果になってしまいました。
その後のラップタイムがとても良いレベルのものだっただけに、本当に残念です。諦めずに猛然とプッシュしてくれたライダー達には感謝したいです。ポキッと折れてしまったチームのモチベーションに火を入れてくれました。
新型車両ということでスズキさん始め、ヨシムラ社内、多くのサプライヤーの方々に時間的な無理をたくさん言って形にしていただいていただけに、ぜひ結果でお返ししたかったのですがそれができず、チーム代表として心よりお詫びを申し上げたいと思います。本当に残念です。

津田拓也 選手コメント

スタートで痛恨のミスをしてしまい、先行したチームを追う形でレースが始まり、焦ったつもりはまったくなかったのですが他車に後ろから追突してしまい、マシンを壊してしまいました。
もっと良い結果をチームにもたらせられたはずなのにそれができず、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
でも、最終的に7位でフィニッシュするまで力を合わせて頑張ってくれたチームと2人のライダーには本当に感謝です。
このレースを通じ、自分はもっともっと強くならなければならないことと痛感しました。

シルバン・ギュントーリ 選手コメント

初めての鈴鹿8耐で、自分のレースキャリアにとって貴重な経験になりました。
ヨシムラチームと一緒に働くことは、とても素晴らしいものでした。残念ながら我々はレース直後にクラッシュし、トップより5ラップを遅れをとってしまいましたが、津田選手、ブルックス選手、そして私の3人は本当に頑張って挽回し、トップから4ラップ遅れまで取り戻すことができました。それだけに、序盤の転倒は残念です。
でも、いくつかのポジティブなこともありました。新型GSX-Rはとても良いマシンでした。いくつかのトラブルがあったけれども、これこそが『レース』だと思います。
ヨシムラチームにはこの経験を感謝していますし、次こそは勝てると確信しています。

ジョシュ・ブルックス 選手コメント

このレースには大きなプレッシャーがかかっていて、それも原因の一つにあったのか、順位を落としてしまったことはとても悲しく思います。
津田選手は大きな責任を感じているけれども、だれもがミスを犯してしまう状況にあったのではないかと私は理解しています。
だから私は拓也には怒っていないし、全力を出し切ることができたのでとても充実感を覚えています。最終的には7位まで取り戻すことができました。
順位はともかく、このレースを通じて観客とスズキファンの皆さんには、チームと新型バイクのポテンシャルが充分に高いことをご理解いただけたのではないかと思います。
そう感じていただければ、残念な結果ではありますが、私自身は嬉しく思います。


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