熱害を減らす方法

<燃焼室に冷却>

燃焼室の冷却は空冷エンジンの最も苦手な項目です。もちろん燃焼室が冷えすぎると爆発エネルギーが熱としてエンジンに逃げてしまったり、燃焼温度が低くなり不完全燃焼の原因になったりします。しかし、空冷エンジンでは始めの数分で十分に燃焼温度が上がりますし、むしろその後の冷却が課題になってくるとお考えください。
ヨシムラのXR/APE/NSF用・MONKEY用ヘッドは、燃焼室上方 (一番熱が溜まる部分) にオイルバスや通路を設けそこに冷却オイルを循環する事で積極的な燃焼室の冷却を可能にしました。是非お使いください。そうは言ってもヨシムラヘッド以外で燃焼室の冷却を行う方法は無いのかもという声もあると思います。なかなかの課題ですが以下に方法を明記します。

<排気ポートの大径化>

エンジンの熱源は燃焼室です。この熱源から最も効率的に熱を排出するのが排気ポートです。排気ポートを大径化する事は熱害に対してとても有効です よくチューニングの手法で「中低速を太らせたいから、排気ポートは広げすぎない方がいい」という場合があります。もちろん大径化にも限度がありますが、なるべくマフラーの入口に近い太さまでテーパー状に広げたほうが燃焼室に排気ガスが残りにくくなります。

♦もし中低速を太らせたいなら♦

排気ポートはマフラーとの段差がなるべく無くなるように広げて、マフラーの内径を小さくしたり全長を長くして排圧を稼ぐのが良いと思います。 マフラーのパイプ部分は肉厚が薄く走行風も良く当たるので冷却されやすいですからね。また、サイレンサーエンドの径だけを小さくしたりするとサイレンサーに熱が溜まり、ウールが燃えたりしますので注意してください。

<オイルクーラーの増設>

エンジンが動く時には最適な温度があります。またエンジンはチューニングをして馬力が向上すると排出熱量も大きくなります。その場合大抵は冷媒(オイルクーラー)の増設が必要になってきます。
エンジン温度が高すぎるとインテークポートで混合気が暖められて、ガソリンが霧ではなく気化してしまいます。ガソリンが気化してしまうと「燃焼」ではなく高速すぎる燃焼、つまり「爆発(異常高速燃焼)」になってしまいます。これではピストンを押し下げる力ではなく、壊す力になってしまいます。高すぎるエンジン温度は部品が溶けたりする原因にもなります。
逆にエンジン温度が低すぎると爆発エネルギーが燃焼室壁面を伝って熱として逃げやすくなったり、オイルの粘度(粘り具合)が高く動く部分の抵抗になったりしてパワーが上手く出ません。
最適なエンジン温度はそのチューニングメニューや車両によって違いますが、空冷の場合走行中のオイルパン温度が70〜100度であれば理想的です。逆に130度近辺になったらオイルクーラーの増設が必要です。熱源である燃焼室の冷却といういう訳ではありませんが、エンジン全体を冷やす事で燃焼室も冷やすという考え方です。
ヨシムラでは52/57mmシリンダー用にメタル製のヘッドガスケットとベースガスケットを用意しています。(量産のベースガスケットは紙です。)ヘッドからベースまで金属でつなぐ事により熱移動が起こりやすくなり、エンジン全体を冷媒として使用出来るようになります。
また、ヨシムラのシリンダーはオイルクーラー経路を取り出せるようになっています。しかし、2012年現在ではオイルクーラーをヨシムラから販売しておりませんので、信頼出来るオイルクーラーシステムを追加する事を推奨します。

<冷却空気の流れのコントロール>

簡単に言えば「走行風を冷やしたいところに当てる」という事です。シュラウドやダクトを使用して、積極的に走行風を当てるのはかなり効果がありますので、是非試してみてください。

<燃料増量>

燃料をちょっと濃いめにしておく事でガソリンの気化潜熱(気化するときに熱を奪う性質)を利用するものです。それには走行中の燃料だけを増量することが重要です。キャブレター車でアイドル付近が濃くなってしまうとプラグがかぶったり、回転が安定しなかったり、ボギングしやすくなったりします。
いずれにせよ、濃くしたとしても「ベストセッティング」プラス1ランク程度にしておいた方が良いと思います。