燃焼強化方法

<排気量アップ>

排気量アップはエンジンの出力を向上する最も有効な方法です。説明するまでも無いですね。
ヨシムラではMONKEY、XR100Motard、Ape100、NSF100用に88ccヘッドキット、115ccボアアアップキット(ノーマルヘッド)、115ccヘッドキット、125ccヘッドキットをラインナップしています。組付けの際には、製品に添付されている取扱説明書と純正のサービスマニュアルをよく読んでください。

※上記製品の詳細ははヨシムラオンライショップを参考にしてください。

ヨシムラ製品取付時の注意点

ヨシムラのエンジンパーツはノーマルのエンジンにボルトオンで取付け出来るように設計されています。もしお手持ちのエンジンが既にチューニングされている場合や、更にハイチューンする場合には以下の点にご注意ください。

1. ピストンとバルブのクリアランス

下記クリアランス値は最小のクリアランス値なので、必ず下記クリアランス値以上に調節してください。
・インテーク側はオーバーラップ上死点後10度(クランク角度)で測定し、0.9mm以上あること。
・エキゾースト側はオーバーラップ上死点前10度(クランク角度)で測定し、1.1mm以上あること。

2. ピストンとヘッドのクリアランス

下記クリアランス値は最小のクリアランス値なので、必ず下記クリアランス値以上に調節してください。
・上死点時のピストンとヘッドのクリアランスが0.45mm以上あること。
(参考:ヨシムラのキットを量産エンジンに組込む場合は上記の測定は不要です。)

<圧縮比アップ>

ヨシムラのミニ用エンジンキットを組込むと、排気量と同時に圧縮比もアップする事が出来ます。

モンキー

仕様 STD 88ccヘッドKIT
圧縮比 8.8 : 1 9.4 : 1

NSF100 / XR100Motard / Ape100

仕様 STD 115ccボアアップKIT 115ccヘッドKIT 125ccヘッドKIT 125ccヘッドKIT Type-R
圧縮比 9.4 : 1 11.5 : 1 11.5 : 1 12.3 : 1 12.99 : 1
圧縮比は混合ガスをどれだけ圧縮するかを表すもので、数字が大きいほど圧縮が強くパワーも出ます。現代のレース用エンジンでは14 : 1を超えるのも当たり前です。しかし、単気筒エンジンでは多気筒エンジンに比べて一つの爆発の力で圧縮をする必要がありますので、あまり圧縮比を高くすると低回転で圧縮ロスが起りやすく、アイドリング不良や低速の出力損失に繋がります。
また、液冷エンジンに比べて空冷エンジンは燃焼室温度が高い為、圧縮比が高過ぎると「異常高速燃焼(デトネーション)」等の悪影響が出やすくなります。これは気体の性質上、圧力が上がるとその温度も上がる事が影響するからです。
季節によりますが爆発圧力が強くなる冬を基準に考えて、圧縮比は13.0 : 1を上限とするのが安全でしょう
ヨシムラでは、圧縮比を上げることが出来る0.25mmベースガスケットを発売しています。取付可能なエンジン、取付後の圧縮比(計算値)、取付時の注意点を記載した取扱説明書をダウンロードすることが出来ます。

縦型エンジン用ダウンロードはこちら (pdfファイル : 274KB)

MONKEY用ダウンロードはこちら (pdfファイル : 119KB)

<吸気量アップ>

排気量アップやマフラーの交換を行うと、エンジンが要求する空気の量が多くなってきます。人に置き換えると、大きな人や運動量の多い場合に空気を多く吸い込む必要があるのと同じ理由です。
吸気量を増やす方法は、吸気管の口径を大きくする事です。(ビッグキャブレターやポート研磨)但し、吸気管の口径を大きくしすぎるとアクセルを開け始めるときにボギングしたり、アクセル全開時にも混合気の流速が遅くなったりしますので注意が必要です。
また、レギュレーションで「リストリクター(口径制限)」がある場合は吸気管内の急な段差を無くす事が吸気量を増やすポイントです。

<燃焼室表面積の低減>

燃焼室表面積の低減って何...?
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燃焼室は球体に近い事が理想です。また球体は同じ体積を持つ立体の中で最も表面積の小さい立体です。燃焼室が球体だと複雑な形状の燃焼室に比べて燃焼が均一に、しかも速く伝わります。同時に表面積が小さいと燃焼エネルギーが「熱」としてエンジンに逃げにくく、ピストンを押し下げる膨張エネルギーが損なわれません。
しかし、パワーを出すにはバルブを大径化する必要があったりして球体にはなりません。実際に球体にする事は可能ですが、エンジンが大きくなったりして別の障害が出てしまいます。
そこでヨシムラのヘッドキットは、ピストン上面を「軽量化」「強度確保」の為にフラット形状にし、「圧縮を稼ぐ」為と燃焼室全体の「プラグからの距離を均一」にする為にヘッド燃焼室を楕円形状としています。これにより燃焼室が球体に近く、つまり燃焼室の表面積を最小限に抑えた設計になっています。

<バルブタイミングの最適化>

バルブタイミングはクランクシャフトの回転角度に対して吸気&排気バルブがどのタイミングで開くかを表すものです。「カムタイミング」と呼ばれる事もありますが、ヨシムラでは伝統的に「バルタイ」と呼んでいます。
バルブタイミングは吸気と排気のタイミングを直接つかさどる要素で、性能に大きく影響します。考え方としては「どの回転の時に出力を出すか」等の「エンジン特性」が変化すると覚えておいてください。
APEやモンキーのエンジンはシングルカム (1本で吸排気を制御) ですので「吸気だけ」とか「排気だけ」のバルタイ調整は出来ません。従って「排気量アップの項」で示したエンジンが壊れない為の条件をセッティングするのに「バルタイ調整」をするとお考えください。
ヨシムラWEBサイトではXR/APE/NSFエンジンでの「バルタイ調整方法」をダウンロード出来ますので、是非トライしてみてください。

ダウンロードはこちら (pdfファイル : 4.8MB)

<ガソリンのオクタン価アップと点火タイミングの最適化(補足説明)>

ミニバイクのチューニングでエンジンが壊れる場合、原因として見落としがちなのが点火タイミングです。アフターパーツで出ている電装品の中には実測するとヨシムラの全日本レーサーより点火進角が過激なものがあります。これでは壊れる可能性が非常に高いです。
点火進角は出力が出ればいいだけではありません。エンジンの仕様、気象条件、ガソリンのオクタン価等で最適な点火進角は変わってきますし、本来販売する以上は考えられる全ての条件で壊れずに問題なく走れることが必要です。
ミニバイクではノーマルより点火進角を進めると出力が向上するのが一般です。しかし、実はガソリンのオクタン価が高くなったり空燃費(空気と燃料の比率)がガソリン固有の理論空燃費に近づくと点火進角は遅らせた方が出力が向上する場合があります。また、回転数やアクセル開度によっては遅らせる必要があるのです。
皆さん、イグナイターを変更するには覚悟が必要です。ご注意ください。